尿蛋白とは
尿蛋白とは、尿中に含まれるタンパク質のことを言います。人体にとって、タンパク質は必要不可欠な栄養分であり、健康な人の腎臓の濾過装置(糸球体)にはタンパク質が漏れ出ないようにするためのフィルターの役割があります。しかし、何らかの理由で糸球体に異常がでると、タンパク質がフィルターを通過し、尿にタンパク質が混ざってしまいます。
健診での尿蛋白異常
健診の尿検査では試験紙法が用いられます。尿に試験紙をつけるだけでわかる非常に簡単な検査です。尿試験紙検査法ではプラスマイナス表記で結果が表されます。
-、±(15mg/dl)、1+(30mg/dl)、2+(100mg/dl)、3+(300mg/dl)、4+(1000mg/dl)
試験紙法では陰性(-)が正常であり、基準値とされます。(-)以外はすべて病気なのかというと、そういう訳ではありませんが、(-)以外の場合は、腎臓に異常がないか医療機関を受診して確認することをお勧めします。
尿蛋白の原因精査のための検査
治療しなければいけない病態か、そうでない場合(偽陽性)かを鑑別する目的で以下の検査を行うことがあります。偽陽性を避けるためには、尿の採取法にも注意が必要です。検尿時は《中間尿》を提出するのがベストです。尿の出始めを検尿で出してしまうと外陰部や尿道口に付着している白血球や細菌とともに蛋白が混ざる可能性があるので検査には不向きです。
- ●早朝尿検査
- 生理的蛋白尿の一つである起立性蛋白尿との鑑別のため、自宅で早朝尿を採取してもらい、受診時に持参してもらいます。検体が古くなると検査結果が変わりますので、受診日の起きた直後の尿がベストです。
- ●採血や尿定量検査
- 健診の尿検査は尿定性検査で尿蛋白の程度が5段階評価となります。病院では尿定量検査を行い、検査時に採取した尿が24時間出たと仮定した時、どれくらいの尿蛋白が1日で漏れ出ているかを概算することができます。血液検査としては、血清Cre値や要すれば血清シスタチンC値を測定することで腎臓の機能を評価できます。
- ●超音波検査、画像検査
- 泌尿器科疾患に伴う尿蛋白を鑑別する目的で行います。尿路結石や尿路感染症、尿路腫瘍で尿蛋白が陽性となることもあるためです。
尿蛋白の偽陽性について
尿蛋白異常を指摘されても偽陽性である場合はよくあります。健康診断で偽陽性が多い理由は、発熱や脱水、精神的な緊張やストレス、軽い膀胱炎、立ち仕事が多い場合や運動、女性の場合は月経中またはその直後の場合などです。健康な方でも、一時的に尿中に蛋白が漏れ出ることがあり、これを生理的蛋白尿と呼びます。特に若年層に見られる起立性蛋白尿は、日中活動中にのみ尿蛋白が検出され、朝一番の尿では陰性となる特徴があります。起立性蛋白尿は腎臓の機能に明らかな異常がない場合ほとんどで、通常は経過観察で問題ありません。
治療が必要な尿蛋白陽性の代表的疾患
- ●慢性腎臓病
- 腎臓の機能の低下が3ヶ月以上続いている状態を指します。腎臓の主な役割は血液を絶え間なく濾過して、老廃物を尿として体外に排出することです。その他、体内の水分量や血圧の調整、電解質の調整、造血ホルモンの分泌、骨を健康に保つなど多くの重要な働きがあります。慢性腎臓病になると、これらの機能が低下し体への影響が現れます。
- ●ネフローゼ症候群
- ネフローゼ症候群とは、腎臓の濾過装置(糸球体)の異常によって、尿中に大量の蛋白質が出ていってしまうことで、血液中の蛋白質量が低下する病気です。主な症状は浮腫(むくみ)です。血中蛋白質には水分を血管内に溜めておく作用がありますが、ネフローゼ症候群の場合、水分が血管の外に漏れ出て組織に溜まってしまい、浮腫を引き起こします。手足の著しい浮腫(靴下の跡がいつまでも消えない、押すと跡が残るなど)がみられる際は、医療機関に受診してください。
- ●泌尿器科疾患(尿路結石、尿路腫瘍)
- 尿路結石は、腎臓から尿道までの尿の通り道に石ができて詰まる病気です。主な症状には、背中や腰に激しい痛みがあります。腎臓の結石があるときは無症状のこともあります。多くは尿管という細い管のところで詰まってしまうことが多く、男性に多いです。尿の流れが滞るため、腎機能低下にも繋がります。尿路腫瘍を疑う場合は、画像検査や膀胱内視鏡検査、尿細胞診検査などが必要となり、早急な対応が必要です。尿潜血や肉眼的血尿が合併することが多いです。泌尿器科専門医の診断、加療が必要です。
すぐの治療が不要な尿蛋白陽性の代表的疾患
- ●起立性蛋白尿
- 特定の体勢(立った状態)で蛋白尿が出現し、仰向けなどで寝ている状態では蛋白尿が出ないというもので、病気ではない蛋白尿に分類されます。学童期や思春期の痩せ型の子供に多く見られ、痩せているために腎臓が圧迫されやすいことが原因とされています。立っている状態や体を動かすと蛋白尿が見られ、寝ている状態では腎臓も圧迫されないので蛋白尿も見られません。そのため朝起きた時にとった尿では蛋白が出ていないにもかかわらず、活動を始めてからは蛋白尿が陽性となります。特に治療の必要はなく成長と共に自然に軽快すると考えられています。学校健診で引っかかることが多いですが、まずは提出する尿を朝起きてすぐにとる尿に統一し、それでも尿蛋白が見られる場合は腎臓内科や小児科へ受診しましょう。
院長からのメッセージ
尿検査(試験紙法)で尿蛋白陽性と指摘された場合、他の尿検査異常よりも深刻な病態の可能性が高いため、経過観察をしたり、放置することはお勧めできません。
また尿蛋白異常を指摘されても診断が確定せず、偽陽性を除外する必要があり、再検査することもあります。尿検査は、腎臓の機能低下などを早期発見する大事な検査です。早い段階で発見し、治療することが腎臓の機能低下を防ぐためには重要ですので、尿蛋白《要再検査》《要精密検査》と結果が帰ってきた場合には、必ず医療機関を受診するようにしましょう。
